働き方のリアル2026-09-08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

介護職の体力負担はどれくらい?腰痛対策と続けるコツ

この記事の要点

「体力に自信がないんですが、介護の仕事って本当に務まりますか」——相談の場でこの言葉を聞かない週はほとんどありません。

結論から言うと、介護は体を使う仕事であることは間違いありませんが、負担の大きさは「道具の使い方」「体の使い方」「職場の人員配置」の3つでかなり変わってくると僕は考えています。体力に自信がないから無理、と決めつける前に、何が負担を生み、どう小さくできるのかを知ってから判断しても遅くはないはずです。

0. 体力仕事という言葉の中身をほどいてみる

「介護は体力仕事」という一言でくくられがちですが、僕の体感では、負担の正体は筋力そのものより「同じ姿勢を繰り返す反復動作」と「相手の体重を支える瞬間の集中的な負荷」にあります。荷物運びのような一定方向の力仕事とは少し違う種類の負担だと理解しておくと、対策も立てやすくなります。例えるなら、引っ越し作業のように重いものを一気に運ぶ仕事というより、同じ重さの荷物を一日に何十回も、しかも相手の呼吸やタイミングに合わせて動かし続ける仕事に近いイメージです。

1. 腰痛・体力負担の実態を数字で見る

厚生労働省が公表している「業務上疾病発生状況等調査」では、腰痛をはじめとする骨格系の疾病の発生件数について、保健衛生業(医療・福祉分野を含む)が製造業に次いで多い水準にあると報告されています。介護現場はこの保健衛生業に含まれるため、身体的な負担が業界としてリスクに位置づけられていること自体は、僕も否定しません。

加えて公益財団法人介護労働安定センターが毎年実施している「介護労働実態調査」でも、離職理由の上位項目の一つとして「腰・肩・膝などの身体的負担の大きさ」を挙げる声が継続して見られます。ただし僕の体感で言うと、面談で実際にこの理由を主に挙げる方は1〜2割程度で、人間関係や収入面の理由と併記されることの方が多い印象です。体力負担は決して無視できない要因ですが、単独の離職理由というより、他の不満と重なったときに背中を押す要因になっているように感じています。

比較の視点も置いておきます。看護職や保育士も身体を使う場面は多いですが、介護職特有なのは「人の体重を支えて移動させる」という移乗動作が日常的に繰り返される点です。以前、倉庫作業から介護職に転職してきた40代の男性から聞いた話ですが、荷物の重さ自体には慣れていても、人の体を支える動作特有の緊張感には最初戸惑ったと話していました。物と人とでは、負担のかかり方が違うのだと僕も改めて感じた出来事です。

2. 負担が大きい場面・パターン3つ

現場で負担が集中しやすい場面は、体感としておおむね次の3つに絞られます。どれも「頻度が高い」か「姿勢が固定される時間が長い」かのどちらかに当てはまります。

場面負担の内容軽減の工夫
移乗介助(ベッド⇔車椅子)腰・膝への負担が瞬間的に集中しやすいスライディングボードやリフトの活用、2人体制
入浴介助中腰姿勢が続く時間が長い複数人での分担、浴室内の手すりや昇降設備の活用
夜勤の巡視・体位変換睡眠が浅い状態での反復動作2人体制の巡視、記録の電子化による時間の確保

この表を見て分かるとおり、負担を生んでいるのは「動作そのもの」以上に「一人で抱え込む状況」であることが多いです。裏を返せば、道具と人員配置さえ整っていれば、同じ動作でも負担の大きさはかなり変わるということです。

3. 負担を減らす実務の工夫、道具と体の使い方とチームケア

負担軽減の柱は大きく3つあると僕は考えています。1つ目は福祉用具です。スライディングボードやリフト、電動ベッドの高さ調整機能は、使いこなせば腰への負担を体感でかなり減らせます。2つ目はボディメカニクスと呼ばれる体の使い方の基本で、初任者研修でも扱われますが、実際に現場で先輩から手を添えて教わるかどうかで身につき方が大きく違います。3つ目はチームケアです。一人で無理に抱え上げようとせず、声をかけて手を借りる文化があるかどうかは、施設によって驚くほど差があります。

この3つのうち、求職者の側で入職前に確認しやすいのは福祉用具の導入状況とチームケアの文化です。ボディメカニクスは入ってみないと分からない部分もありますが、道具と人員体制は見学の段階でかなりの精度で見極められます。所要時間の目安で言うと、見学時に移乗介助を1回実演してもらうだけで10分程度、これだけで職場ごとの投資姿勢がかなり見えてくると僕は感じています。

4. 続けられた人と、辞めた人の分かれ目

これまで相談を受けてきた中で感じるのは、体力そのものの強さより「早い段階で無理を我慢せず声を上げられたかどうか」が続けやすさを分けているということです。ある特別養護老人ホームで働き始めた方は、入職1か月目で腰の張りを感じた際にすぐ先輩へ相談し、移乗の際は必ず声をかけてリフトを使う運用に変えてもらったことで、その後も無理なく勤務を続けられていました。逆に、我慢して一人で抱え続けた結果、数か月で腰を痛めて休職に至った例も見てきました。動作の技術以上に、負担を早めに共有できる関係性があるかどうかが分かれ目になっていると僕は感じています。

5. よくある失敗と対処

体力面で無理をしてしまう人には、いくつか共通したパターンがあると僕は感じています。1つ目は「新人だから頼れない」という遠慮です。入ったばかりで先輩の手を止めるのが申し訳なく、一人でこなそうとしてしまう。対処としては、入職前のオリエンテーションや面接の段階で「新人はまず声をかけて手伝ってもらう前提」なのかを確認しておくことが有効です。この前提が職場の共通認識になっているかどうかで、遠慮のしやすさはかなり変わります。

2つ目は「道具があるのに使い慣れていないから使わない」パターンです。リフトやスライディングボードは操作に少し時間がかかるため、忙しい時間帯にはつい素手でこなしてしまう職員も少なくありません。ここでの対処は、入職直後に道具の使用を先輩と一緒に何度も練習し、体で覚えてしまうことです。慣れてしまえば、素手でこなすより結果的に早く終わる場面も多いというのが僕の体感です。

3つ目は「体を壊してから初めて相談する」パターンです。張りや違和感を感じた段階で我慢し、痛みが強くなってから初めて上司に伝える方を何人も見てきました。対処としては、違和感を覚えた時点で早めに申告し、当面はその介助を複数人体制に切り替えてもらうといった小さな調整を重ねることです。我慢の期間が長いほど回復にも時間がかかるため、早めの相談自体がもっとも効果的な負担軽減策だと僕は考えています。

6. ケース比較 — 職場タイプによる負担の違い

体力負担のかかり方は、職場のタイプによってもかなり性質が異なります。大規模な特別養護老人ホームでは、リフトなどの福祉用具が一通り揃い、入浴や移乗も複数人体制を組みやすい傾向があります。人手はある程度確保されているため、一つひとつの動作にかかる個人の負担は分散されやすいのが特徴です。

一方、少人数で運営されるグループホームでは、リフトなどの大型設備を導入していない事業所もあり、職員一人ひとりの工夫や声かけの徹底が負担軽減の要になります。設備投資よりも、日々のチームワークで補っている職場が多いという印象です。

訪問介護になると事情がまた変わります。基本的に一人で利用者宅へ伺うため、移乗や入浴の場面でも即座に手を借りられる同僚はいません。その代わり、訪問介護は身体介護だけでなく生活援助の比重が高い依頼も多く、身体的負担が集中する時間そのものは施設より短いケースもあります。どのタイプが向くかは体力の量というより、「一人で完結させる働き方」と「チームで分担する働き方」のどちらに安心感を持てるかで見極めるのが良いと僕は考えています。

7. 職場見学・面接で確認すべきチェックポイント

体力面の不安を減らすために、見学や面接の場で確認しておきたい項目を整理します。

言葉での説明だけでなく、可能であれば実際の介助の様子を見せてもらうのが一番確実だと僕は考えています。同じ「移乗介助あります」という求人票の一文でも、その裏にある負担の大きさは施設ごとにまったく違うからです。

8.(結論)

体力に自信がないという不安は、決して的外れなものではありません。ただ、その不安の正体を分解してみると、「筋力の問題」というより「道具・体の使い方・チームの仕組み」の問題であることが多いというのが、現場を見てきた僕の実感です。負担をゼロにすることはできませんが、よくある失敗のパターンを知り、職場タイプごとの違いを踏まえて確認すべきポイントを押さえておけば、体力に自信がない方でも無理なく続けられる場所は十分に見つかります。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 介護職は体力がないと続けられませんか?

結論として、体力そのものより動作の効率化と職場の人員体制が続けやすさを左右すると僕は考えています。移乗などの動作は正しい体の使い方と道具の活用で負担を小さくでき、体力に自信がない方でも続けている例を現場でいくつも見てきました。心配なのは体力の量より、負担を減らす仕組みが職場にあるかどうかです。

Q. 腰痛持ちでも介護職に転職できますか?

結論として、既往の腰痛があっても転職の選択肢は十分にあります。ポイントはリフトやスライディングボードなど福祉用具の導入状況と、ボディメカニクスの教育体制です。面接や見学の段階でこれらを具体的に確認できれば、既往のある方でも負担の少ない職場を選べる余地は残っています。

Q. 体力面の不安を職場見学でどう確認すればいいですか?

結論として、一番確実なのは移乗介助の実演を見せてもらうことです。使用している福祉用具の種類、入浴介助の人員配置、夜勤の巡視体制を具体的に尋ねると、その施設が身体的負担にどれだけ投資しているかが見えてきます。言葉での説明より、現場を見た方が実態はつかみやすいと感じています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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