採用動向2026-07-08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

関西の介護施設 採用動向

この記事の要点

「大阪と京都、どっちのほうが介護の求人は多いんですか」——関西の方から、こんな質問をよく受けます。

皆さま、この質問に答えるのは、実はそれほど簡単ではありません。正直に言うと、「多い少ない」だけで比較すると本質を見誤ります。人口が多いエリアは求人数も多い一方で、応募者も多く競争が生まれます。人口が少ないエリアは求人数こそ少ないものの、採用のハードルが下がっている場合もあります。今日は、関西の介護採用の実際の温度差を、エリア別に整理します。

結論から言うと、関西の介護採用は「都市部は選択肢が多いが競争もある」「郊外・地方部は選択肢は絞られるが未経験でも通りやすい」という構造になっています。この構造を理解したうえでエリアを選ぶことが、遠回りしない転職の第一歩です。

0. なぜ「エリア」を先に考えるべきなのか

介護職の転職では、施設形態や資格ばかりに目が向きがちですが、実はエリアの選び方が採用のされやすさに大きく影響します。同じ経歴・資格でも、応募するエリアによって書類選考の通過率が変わることは珍しくありません。これは、そのエリアの高齢化の進み方、施設の新規開設状況、競合する求人媒体の多さなど、複数の要因が絡み合っているためです。ここが今回の隠れた主役です。

もう少し丁寧に説明すると、関西は近畿2府4県それぞれで高齢化の進み方も、施設整備の状況も、働く人の集まりやすさも異なります。総務省の人口推計等を見ると、近畿全体の高齢化率は全国平均に近い水準で推移していますが、府県・市町村単位で見ると差は決して小さくありません。都市部は人口そのものが多いため高齢者の絶対数も多く、施設需要は旺盛です。一方で郊外や地方部は高齢化率そのものは高いものの、働き手の絶対数が少なく、事業所側が採用のハードルを下げてでも人を確保しようとする力学が働きやすい、というのが実感です。この「需要と供給のねじれ」を理解しているかどうかが、エリア選びの解像度を左右します。

1. 大阪市内・北摂エリア — 選択肢は多いが競争もある

大阪市内や北摂(豊中・吹田・箕面など)は、施設数・求人数ともに関西で最も多いエリアです。選択肢が多い分、応募者も集まりやすく、人気のある事業所(駅近・給与水準が高い・研修体制が充実等)は競争率が上がる傾向があります。逆に言えば、駅からやや離れていたり、開設から時間が経っていない施設は、条件面で他の応募者に見劣りする印象を持たれがちで、結果として未経験者にもチャンスが回ってきやすい、という側面もあります。人気求人だけに応募が集中しがちですが、少し視野を広げるだけで採用の可能性は大きく変わります。

1-1. 都市部で評価されやすい経験

都市部の事業所は利用者の入れ替わりや多職種連携の頻度が比較的高く、対人対応力・チームでの動き方に慣れている方が評価されやすい印象があります。前職が接客・サービス業であれば、その経験は都市部の面接でむしろ強みになります。

1-2. 新規開設施設を狙うという選択肢

大阪市内・北摂エリアは高齢化の進行とともに新規施設の開設が続いています。新規開設施設は経験者だけでなく未経験者の採用にも積極的な傾向があり、僕の周囲の実感でも、開設直後の施設は狙い目になりやすいです。

1-3. 給与水準と生活コストのバランスを見る

大阪市内は給与水準が周辺エリアよりやや高めに出やすい傾向がありますが、家賃などの生活コストも比例して上がります。手取りの数字だけでなく、通勤時間・生活コストまで含めたトータルで比較することを僕はいつもおすすめしています。北摂エリアは大阪市内へのアクセスの良さと、比較的落ち着いた住環境のバランスが取れているエリアとして、家庭を持つ方に選ばれやすい印象があります。

2. 京都・南部エリア — 落ち着いた環境と着実な求人

京都市内や京都南部は、大阪ほどの求人数はないものの、比較的落ち着いた環境で働ける施設が多い印象です。社会福祉法人運営の施設が多く、安定志向の方には向いているエリアだと感じています。

2-1. 資格取得支援に力を入れる法人が多い

京都エリアは、地域に根ざした中小規模の社会福祉法人が多く、職員の定着を重視して資格取得支援制度を手厚く用意している事業所が目立ちます。長期的なキャリア形成を考える方には相性が良いエリアです。

2-2. 観光地エリア特有の事情

京都市内中心部は観光需要との兼ね合いで、宿泊・飲食・小売から転じてくる方も一定数います。接客経験が長い方は、対人対応力の高さを評価されやすいエリアだと感じています。一方で、観光シーズンには周辺業種の人手不足の影響で、介護分野への人材流入が一時的に細る時期もあり、事業所によっては通年での採用活動に力を入れています。

3. 神戸・阪神間エリア — 訪問系サービスの需要が高い

神戸市・阪神間(西宮・尼崎など)は、在宅サービス(訪問介護・デイサービス)の需要が高いエリアです。人口密度と高齢化率のバランスから、在宅での介護ニーズが増えていることが背景にあります。

3-1. 訪問介護は未経験者にはやや高いハードル

1人での訪問業務が基本となる訪問介護は、未経験からいきなり挑戦するにはハードルが高い場合があります。ただし、同行研修期間をしっかり設けている事業所であれば、未経験からでも段階的にスキルを積める場合があります。求人票の研修期間の記載を必ず確認してください。

3-2. サービス提供責任者というキャリアの先

訪問介護で経験を積むと、サービス提供責任者という役割が視野に入ってきます。利用者ごとのケアプランに沿ったサービス調整を担う役職で、訪問介護の中では給与水準が上がりやすいポジションです。神戸・阪神間で訪問系からキャリアをスタートする場合、この先のキャリアパスも念頭に置いておくと、目先の仕事の見え方が変わってくると思います。

4. 奈良・和歌山・その他関西エリア — 未経験の入口が広い

奈良・和歌山など、都市部から少し離れたエリアは、求人の絶対数こそ都市部より少ないものの、応募者数も少なく、未経験者の採用に前向きな事業所が多い印象です。安定した雇用を求める方や、地元で長く働きたい方には狙い目のエリアと言えます。

エリア特徴向いている人
大阪市内・北摂求人数最多・競争もあり対人経験がある方・新規開設狙いの方
京都・南部落ち着いた環境・資格支援手厚め長期的なキャリア形成を考える方
神戸・阪神間訪問系の需要が高い対人ケアが得意な方
奈良・和歌山・その他未経験の入口が広い安定志向・地元で働きたい方

この表は当メディア独自の整理であり、統計値ではありません。実際の採用状況は時期・事業所により変動します。

4-1. Uターン・地元就職の選択肢としても有効

奈良・和歌山出身で都市部に出て働いている方が、地元に戻って介護の仕事を選ぶケースも増えています。地域に根ざした社会福祉法人は、地元出身者を歓迎する傾向があり、長く働き続けられる環境として選ばれやすいというのが僕の実感です。

率直に言うと、「どのエリアが一番良いか」という質問に、万人共通の正解はありません。都市部での競争を楽しめる方もいれば、郊外の落ち着いた環境で長く働きたい方もいます。大切なのは、自分がどちらのタイプかを先に自覚したうえで、エリアを選ぶことです。

5. エリアと施設形態は掛け算で考える

ここまでエリア単体の話をしてきましたが、実際の求人選びではエリアと施設形態を掛け合わせて考える必要があります。同じ大阪市内でも、特養と有料老人ホームでは求められる経験も採用のハードルも違います。同じ奈良でも、デイサービスと訪問介護では働き方がまったく別物です。エリアの特性を頭に入れたうえで、次はどんな施設形態が自分に向いているのかを重ねて考える。この掛け算の視点が、求人票を読む解像度を一段上げてくれます。施設形態ごとの違いについては、当メディアの別記事で詳しく整理していますので、あわせて参考にしてください。

(結論)エリアを決める前にやること

ここまでの内容をもとに、通勤可能な範囲を地図に書き出し、上記4エリアのどこに該当するか確認してください。そのうえで、2〜3の事業所の求人票を見比べ、実際に見学に行く。所要時間は準備に30分、見学に半日程度です。エリアの特性を知ったうえで動けば、応募先選びのスピードも精度も上がります。

最後に、エリア選びで一つだけ注意してほしいことがあります。それは「求人が多いから採用されやすい」と単純に考えないことです。求人数が多いエリアは、それだけ選ぶ側の目も肥えており、施設ごとの差別化が進んでいます。逆に求人数が少ないエリアだからといって、誰でも簡単に採用されるわけでもありません。結局のところ、エリアの特性を踏まえたうえで、自分の経験・希望と照らし合わせて事業所を選ぶという地道な作業は避けられません。この記事が、その作業の最初の一歩の助けになれば幸いです。

皆さんいかがでしたでしょうか。関西は介護の求人が全国的にも厚いエリアの一つです。エリアごとの特性を知って、自分に合った戦い方を選んでください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 大阪と京都どっちが介護求人が多い?

記事では大阪市内・北摂が関西で最も施設数・求人数ともに多いエリアと整理しています。ただし多い少ないだけで比較すると本質を見誤ると述べられています。求人が多いエリアは応募者も集まり競争が生まれ、人気施設は競争率が上がる傾向があるためです。一方で京都は大阪ほどの求人数はないものの、落ち着いた環境の施設が多いとされています。

Q. 未経験でも通りやすい関西のエリアは?

記事では奈良・和歌山などの都市部から少し離れたエリアが、求人の絶対数は少ないものの応募者数も少なく、未経験者の採用に前向きな事業所が多い印象と述べられています。安定した雇用を求める方や地元で長く働きたい方には狙い目とされ、Uターン・地元就職の選択肢としても有効です。また大阪市内・北摂の新規開設施設も未経験者採用に積極的な傾向があります。

Q. エリアを決める前に何をすればいい?

記事では、まず通勤可能な範囲を地図に書き出し、大阪市内・北摂、京都・南部、神戸・阪神間、奈良・和歌山その他の4エリアのどこに該当するか確認することを勧めています。そのうえで2〜3の事業所の求人票を見比べ、実際に見学に行く流れです。所要時間は準備に30分、見学に半日程度が目安とされています。さらにエリアと施設形態を掛け算で考える視点が重要です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全11ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。

エリアの地図を持って、次の一歩へ

関西は介護の求人が厚いエリアです。適性診断で自分に合う職域タイプも確かめてみてください。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む